中澤社会保険労務士事務所の代表・中澤 洋(なかざわ ひろし)です。
◆人手不足の中小企業が4年連続増加
日本商工会議所は、全国の中小企業4,108社を対象に実施した「人手不足等への対応に関する調査」の結果を発表しました。それによると、回答した2,613社のうち、1,731社(65.1%)が「人手が不足している」と回答しており、4年連続で割合が上昇していることから、中小企業の人手不足が悪化していることが浮き彫りとなりました。
◆人手不足が深刻な業種
業種別に見ると、次の業種で高い数値を示しています。
「宿泊・飲食業」の79.1%
「運輸業」(78.2%)、
「建設業」(75.6%)が続きました。
特に飲食業は、「求人募集を出しても人が集まらない」「採用してもすぐに辞めてしまう」など問題が深刻化しています。また、人手が不足しているが人員を充足できない理由について、採用の面では「立地する地域に求めている人材がいない」という回答が多く、これは人口減少や大都市圏への流出などによるものと考えられます。
◆人材確保のために取り組んでいることは?
同調査での多様な働き方に関する取組みついての設問では、約5割の企業が「長時間労働の削減」「再雇用制度」を、約3割の企業が「年休取得の促進」「子育て・介護休暇制度」を実施していることがわかりました。それによって得られた効果として、「高齢者の活躍促進」「人材の確保(退職者の減少)、定着」「従業員のモチベーション向上」などが挙げられています。
また、外国人材の受入れについては、「受入れのニーズがある」「雇用するか検討中」と回答した企業は合わせて1,145社(42.7%)だったことから、外国人の雇用に関する関心が高いことがうかがわれます。しかし、コミュニケーションのとりづらさや文化の違い、雇用する際の手続きの煩雑さなどに課題があるようです。
◆高年齢者の雇用促進の状況
厚生労働省から、平成29年「高年齢者の雇用状況」(6月1日現在)が公表されました。これは企業に求められている毎年6月1日現在の高年齢者の雇用状況の報告を基に、「高年齢者雇用確保措置」の実施状況などを集計したものです。なお、雇用確保措置を実施していない企業に対しては、都道府県労働局・ハローワークは重点的な個別指導を実施するとのことです。
今回の集計では、従業員31人以上の企業15万6,113社の状況がまとめられています。この結果から中小企業(従業員31人〜300人規模)139,888社の状況を見てみましょう。
. 中小企業の定年制採用状況
定年制の内容 |
採用企業先数 |
対前年増減 |
構成比 |
定年制の廃止 |
3,983 |
+1 |
2.8% |
65歳以上定年 |
25,155 |
+1,968 |
18.0% |
希望者全員66歳以上継続 |
8,540 |
+1,393 |
6.1% |
70歳以上可能 |
32,779 |
+2,504 |
23.4% |
合 計 |
70,457 |
+5,866 |
50.4% |
◆労働人口減への対策
以上のように、2025年までに700万人が減ると言われている日本の人口問題を抱え、人手の確保のため、定年制の廃止やさらなる定年延長を行う中小企業は着実に増加しているようですが、表に掲げた定年制度の他に65歳までの継続雇用制度を取り入れている先が69,000先余りあり、結果として420先(3%)余りの先が高齢者雇用の未対応先となっています。
継続雇用制度導入に伴い、法的に様々な問題が起きてくる可能性があります。
特に、再雇用に伴う賃金や職種変更を行う場合は労働法令や就業規則・雇用契約書との整合性、不利益変更とならないようより慎重な検討が必要です。
◆就業規則等への対応
定年再雇用者についての就業規則の適用については次のような取扱いが考えられますが、一般的には(2)または(3)の扱いとする事業所が多いと考えられます。この場合には正社員に適用される就業規則に限定正社員、パートタイマー、期間契約社員には適用されない旨を定め、適用関係を明確にしておく必要があります。
(1)一般の正社員と同様の扱いとし、引き続き、正社員の就業規則を適用する。この場合は就業条件は正社員と同様になる。
(2)業務の内容を一般の職員と区別し、限定正社員就業規則のようなものを策定し、契約期間、賃金構成等を正社員と区別する。
(3)期間雇用とし、個別の雇用契約書で対応する。