年金には制度として加入を義務付けられている公的年金と個人が任意に加入する私的年金とがあるが、今回は公的年金に限定して説明する。 日本で公的年金が最初に制度化されたのは昭和16年6月1日の「船員保険」である。当時の船員業務は重労働で引退年齢も早く、引退後の生活原資に充てるため、いち早く年金制度が取り入れられた。
次にできたのは、製造現場で働く男性用年金としての「労働者年金保険」である。この年金は後に事務系の男性・女性労働者も加入対象となり現在の厚生年金保険となった。
その後、私立学校の教職員、公務員にも年金制度が取り入れられるようになった。加入対象者が拡大してゆく過程で、労働者を対象とした一本の年金制度にまとまれば今日の年金制度一元化問題も複雑にはならなかったが、各加入団体が独自性を競い別々の年金制度になってしまったのである。
その後、年金は自営業者にも取り入れられ、昭和36年4月1日に国民年金として制度化された。自営業者には定年がないとはいえ、高齢になれば体力が衰え収入の維持が厳しくなる。
また、サラリーマンの妻は夫の年金で扶養されればよいという考え方が強く、独自の年金権がなかったが、女性の権利拡大が進み、昭和61年4月1日に第3号被保険者の名称で国民年金に加入することになった。これにより国民の全員が何らかの年金に加入することになった。(国民皆年金)
年金の歴史(加入対象者の拡大) 相模経済新聞 2007年9月20日掲載記事